診断は、名乗れる名前が無いと広まりません。「あなたは3番です」と言われて人に話す人はいない。
最初のバージョンは6つに分けていました。これが失敗で、25人を測ったら7人が同じ箱に入った。6分の1のはずが、実際には3割近くが1つに集まる。名前を付けても名乗る意味がありません。
そこで16に増やしました。増やすこと自体は簡単で、難しかったのは名前の方です。
先に決まりを4つ置いた
名前を考え始める前に、こういう決まりにしました。
ひとつ、一息で言えること。名乗るための名前なので、長いと誰も口に出しません。
ふたつ、優劣を含まないこと。
みっつ、鑑定書の世界に合うこと。生成りの紙に墨と朱で刷ったような画面にしたので、そこに載る言葉づかいで揃えます。
よっつ、声の話であること。
決まりを先に置いたのは、16個も考えていると途中で基準がぶれるからです。10個目くらいで「これは語感がいいから」と押し通したくなる。先に文字にしておくと、そこで止まれます。
2つ目が一番効いた
優劣を含まない、という決まりが一番仕事をしました。
声の分類に名前を付けようとすると、どうしても「よく通る声」「深みのある声」みたいな褒め言葉が出てきます。褒め言葉を1つ入れると、残りの15個が自動的に負けになる。「良い声型」を作った瞬間、他の15人は良くない声だと言われたことになります。
これは避けたかった。16分の15を不幸にする診断は作りたくない。
なので名前は全部、情景か物にしました。夜霧の語り部、鋼の寡黙、木漏れ日の聞き手、銀線の刃、陽だまりの主役。どれも褒めても貶してもいません。ただ、そういう声だと言っているだけです。
4つ目も効いた
声の話であること、という決まりも地味に効きました。
この手の診断は、放っておくと性格診断に寄っていきます。「あなたは社交的で」と書き始めると読み物としては面白くなるのですが、測っているのは周波数です。性格は測っていない。
書けることの範囲を、測ったものの範囲に合わせる。当たり前ですが、書いていると気持ちよくなって越えたくなります。
開いたままの問い
名前は全部、日本語の情景に寄せました。夜霧も木漏れ日も、日本語の手触りで効いている言葉です。
つまり英語圏の人には、この16個はたぶん何も響きません。訳しても「Storyteller of the Night Mist」で、元の湿度は残らない。
言語ごとに名前を作り直すのが正しいのか、それとも類型そのものを言語に依存しない形にすべきなのか。まだ決めていません。