このツールは、録音が終わってから結果が出るまで十数秒かかります。声の特徴を読み取って、集めた声と照らし合わせるので、どうしてもかかる。
その間、画面にはこう出ていました。
解析中...
これだけです。
待たされているのか、壊れているのか
見せた人に言われたのは、こういうことでした。
どれくらい待てばいいのか分からない
考えてみれば当たり前でした。点が3つ動いているだけの画面は、あと3秒なのか3分なのかを何も教えません。しかも初めて使う人は、そのツールがちゃんと動くものかどうかも知らない。
「待たされている」と「壊れている」を、利用者は区別できない。区別できないとき人は帰ります。
10秒黙っているのと、10秒かけて進捗を見せるのは、かかる時間は同じです。でも体感がまったく違う。
4つの工程に重みを付けた
進捗率を出すには、何がどれだけ時間を食うかを知る必要があります。適当に等分すると、実際とずれて途中で止まって見える。
実測して、こう配分しました。
準備が4分の1。声の特徴を読み取るのが15%。似ている声を探すための下ごしらえが半分。照らし合わせが1割。
一番時間のかかる下ごしらえは、中をさらに細かく割りました。どこまで進んだかを途中でも数字に反映します。半分の区間がぬるっと動くだけで、見え方がだいぶ変わりました。
絶対に戻らないようにした
ひとつだけ、強い決まりを入れました。一度進んだ割合は絶対に戻らない。
進捗率が戻ると、人は一気に信用しなくなります。63%まで行って41%に戻ったツールを、もう一度待つ気にはなれない。
工程の見積もりがずれたり、飛ばす工程があったりすると、作り方によっては数字が戻ります。なので戻らない作りにして、本当に戻っていないかを毎回機械で確かめるようにしました。
何をしているかも書いた
割合と一緒に、いま何をしているかの一言も出しています。声を読み取っている、似ている声を探している、といった文です。
これは割合ほど効いていない気もしますが、少なくとも「動いている」ことは伝わります。
中身は1秒も速くなっていない
この変更で、処理は1ミリ秒も速くなっていません。同じ十数秒です。
やったのは、待っている人に何が起きているかを伝えただけ。それだけで、画面の前から人がいなくなる理由がひとつ消えました。
速くする方が偉い気がして、つい最適化の方に手が伸びます。でも先に効いたのは、待たせ方の方でした。