このツールは「あなたの声はこの役に近い」という出し方をします。役名を出す以上、どの役を選ぶかは自分で決めなければいけません。
決め方として一番ラクなのは、知名度順です。その人の代表作を出しておけば、読んだ人は「あの声か」とすぐ分かる。
でもそれをやめました。
測っているのは素の話し声
このツールが測るのは、ラジオやインタビューで喋っているときの声です。台本を読んでいない、演技していない、その人が普段出している声。
役の声は違います。演者は役に合わせて、高さも息の量も響かせ方も変える。それが仕事なので当然です。
つまり「素の話し声が似ている」と「あの役に似ている」は、別の話になりえます。作り込みの大きい役ほど、そのずれが大きい。
素の声を測っておいて、作り込んだ役の名前を出したら、それは嘘です。読んだ人は「自分はあの役の声なんだ」と受け取るのに、実際に似ているのは演者の素の声の方なので。
調べたら本人が明言していた役があった
判断に迷った役が何本かありました。
ひとつは、知名度としては文句なしの役です。公式のインタビューを探したら、本人がその役について「抑揚をつけないクールな喋り方にした」「声のトーンを低くしてみたり」と語っていました。意図的に作った声だと明言している。
それを読んだ時点で、迷いは消えました。本人が作ったと言っているものを「素の声に近い」として出すわけにはいきません。別の役に差し替えました。
もうひとつは、先代から引き継いだ役です。こういう役は、先代の声に寄せる作り込みが構造的に強く入ります。うまい人ほど寄せる。うまさがそのまま、素の声からの距離になる。これも外しました。
外すほど、演者が上手いという話になる
書きながら気づいたのですが、これは悪口ではありません。
素の声から遠い役ほど外れる。つまり外れた役が多い人ほど、声を作り分けられているということです。判断の記録を読み返すと、外した役のリストがそのまま「この人はこれだけ引き出しがある」という一覧になっていました。
このツールは演技力を測れません。物理特性しか見ていないので。でも役を選ぶ作業をしていると、測れないものの輪郭だけは見えてきます。
記録は全部残してある
どの役を採って、どの役をなぜ落としたか。出典のURL付きで1本ずつ書き残しています。あとで自分が「なんでこれにしたんだっけ」と迷わないためです。
同じことをやろうとしている人がいたら、知名度で選ばないことだけ先に決めておくといいと思います。あとから直すのは、けっこうしんどい作業でした。